Aïcha/Khaled「アイシャ」/ハレド
ハレドKhaledはアルジェリアを代表する歌手です。アルジェリアの公用語はアラビア語ですが、フランス領だったこともあり、実際には大部分の人々がフランス語を話せます。
ハレド自身1990年代からはフランスに定住しており、フランス語で歌ったこの曲は1996年にヒットしました。
Cheb Khaled - Aicha. paroles (lyrics)
ちなみに彼は、2010年のサッカー・ワールドカップ開会式でも「didi」という曲を披露しています。
「アイシャ」というのは女性の名前です。この曲では、彼のアイシャに対する愛と賛美の言葉がつらつらと語られています。
この曲、フランス語圏では定番になっているようで、私が住んでいるケベック州でも、ときどきラジオで流れてきます。
「Comme si」まるで~であるかのように
Comme si je n'existais pas
冒頭のこの部分ではComme siの使い方を覚えたいですね。英語のas ifに相当し、「まるで~であるかのように」という表現になります。
Comme si+半過去の組合せで、現在の事象に対して使います。「まるで僕がそこにいないかのように」という意味になり、「彼女は僕のすぐそばを通り過ぎていく」とつながります。
シバの女王で「r」の発音練習
Sans un regard, reine de Saba
reine de Sabaは日本語にするとシバの女王ですね。シバの女王は旧約聖書に登場する女王ですが、誇り高い美女の代名詞としてよく使われます。
ここで、日本人の苦手な「r」の発音について、しっかり耳を澄ましておきましょう。
regardの「r」と reineの「r」は彼の発音では違ったように聞こえます。reineの「r」の方が巻き舌っぽく聞こえますね。
でも本来のフランス語の「r」の発音はregardの「r」で覚えます。
フランス語命令形「écoute-moi」
そしてサビの部分。
Aïcha, Aïcha, écoute-moi,
Aïcha, Aïcha, t'en vas pas,
écoute-moiはtuに対する命令形で、本体最後のe母音は発音されません。ここでは歌なので、「エクテモワ」と聞こえますが、実際の会話では「エクットゥモワ」という感じになるはずです。
中性代名詞「en」
t'en va pasは「行かないで」という風に翻訳されます。ここでのenは中性代名詞です。
中性代名詞enは、一般的に「de+物」や「des+物」が置き換えられたものです。ここでは「de moi」が置き換えられていると考えると分かりやすいと思います。
私から離れていかないで、という感じですね。
ちなみに、この歌の最後の部分はアラビア語なので、まったく聞き取れなくてもOKです。アイシャという女性に対する憧れと賛美が語られた美しい歌です。