「Dans ma rue(私の街で)」ZAZ
「Dans ma rue」は、もともとエディット・ピアフの曲です。エディット・ピアフというと、「ばら色の人生 La vie en rose」を思い起こす人が多いかもしれません。
Dans ma rue ZAZ French and English subtitles
歌詞は、一人の病気の女の子の話です。
モンマルトルの一角に住む彼女は、病気がちで、いつもベッドから外の街並みを眺めて暮らしていました。
時には、街角をさまよう娼婦たちのささやき声に目を覚ますこともありました。
少女の父親はアル中で、かわいそうな彼女は家計のために売春を強いられます。
そして少女は、自分が今まで不気味思っていた、夜な夜なふらつく売春婦に自分もなってしまったことを悲しみます。
最後には、病気のために、少女を買ってくれる客もつかなくなりそのまま道端で死んでしまいます。彼女のなじみの街角に、少女を迎えに来た天使たちが降り立ち、少女の悪夢は終わるのでした…。
エディット・ピアフについて
エディット・ピアフはフランスの歌手(1915-1963)です。その生涯についてはいろいろな説があり、なぞに包まれている部分もあります。
この歌詞は、父親に売春婦として働かされる少女のストーリーです。彼女自身父親に対しての反発があり、また実際にノルマンディーで売春宿を営んでいた祖母の元に預けられたときの経験がモチーフとなっているともいわれています。
少女は病気という設定ですが、エディット・ピアフ自身、幼少のころに角膜炎を患っていて目が見えなかったそうです。
ZAZ(ザーズ)について
上に紹介した動画は、ZAZがエディット・ピアフの曲をカバーしたものです。彼女はフランス生まれのシンガーソングライター。音楽活動としては、2010年に初のアルバムをリリースしています。
この曲を収録したファーストアルバム『モンマルトルからのラブレター』は、フランスではトップ1位、さらにドイツ、スイス、ベルギー、ギリシャ、ロシア、クロアチアなどでトップ10内に入り、国際的にヒットしました。
エディット・ピアフのこの曲はもの悲しい曲ですが、彼女によって粋にアレンジされているので、ぜひ聞いてみてください。
繰り返される関係代名詞節
ちょこっとだけフランス語のお勉強を。
この歌詞で繰り返さえされるサビの部分には、関係代名詞が含まれています。
Dans ma rue y'a des gens qui s'promènent
関係代名詞「qui」は、先行詞「gens(人々)」をさしています。
ちなみに、ここの関係代名詞節で使われている「s'promènent」の原形は、「se promener(散歩する、さまよう)」となり、再帰代名詞を取ります。
この歌の中には、同じパターンで「qui」を使った関係代名詞節が出てきます。
Dans ma rue y'a des ombres qui s'promènent
Dans ma rue y'a des femmes qui s'promènent
Dans ma rue y'a des anges qui m'emmènent
フランス語の関係代名詞
フランス語の関係代名詞は、英語と若干異なる点があるので、英語の次にフランス語を学ぶ人は注意が必要です。
たとえば、英語では関係代名詞として「which」と「who」を使い分けますが、先行詞が「物」なら「which」、「人」なら「who」を使います。
しかし、フランス語では先行詞が「物」であっても、「人」であっても関係ありません。先行詞が、関係節の中で主語として作用している場合は「qui」を、直接目的語として作用しているときは「que」を使います。
これは、英語を母国語とする人がフランス語を学ぶときにも混乱してしまう点です。
繰り返されるタイトルで「r」の発音練習も
また、タイトルでもある「Dans ma rue」は、何度も繰り返されるので「r」の発音練習にもなります。関係代名詞を復習するのと同時に、正しい発音を身につけられそうですね。
病気で最終的には死んでしまう少女のストーリーなのですが、そういう悲痛さを別にして、音楽と歌詞の美しさに聴き惚れてしまう逸品です。