デンゼル・ワシントン+ロバート・ゼメキス「FLIGHT(フライト)」レビュー―機上では見たくない映画
私は飛行機の中で映画鑑賞をすることが多いのですが、この映画はちょっと機上では見たくないと思いました。
アメリカ、オーランドからアトランタを目指して離陸した飛行機に、機体のトラブルが発生し、急降下を始める…というストーリー。デンゼル・ワシントン演じる機長は冷静な判断で、乗客と教務員の命を救おうとする。
「フライト」のあらすじ
画像引用:Amazonより
2012年、アメリカ映画。
デンゼル・ワシントン演じるウィップ機長は、故障した飛行機を背面飛行させた後、密集市街地を避けて野原へ胴体着陸させた。これにより、乗務員を含む102名のうち96名の命が救われたが、事故直後の検査で、機長の血液からコカインとアルコールが検知される。
ウィップ機長の冷静な判断と奇跡的な操縦は、多くの人命を救ったとして英雄的に報道された。しかし、一方でアルコールと薬物摂取の事実が確定されれば、6名の命が失われた事故の過失致死に問われ終身刑となるだろう。
事故の後、機長はマスコミから姿を隠し、依存症を克服しようと試みるが…
依存症に立ち向かうヒューマンドラマ
トラブルの発生した飛行機を無事着陸させるという、アクション的なシーンも魅力的ですが、映画のハイライトは依存症との闘いにフォーカスされています。
デンゼル・ワシントン演じるウィップ・ウィトカーは、アルコール依存症であり、コカインの常習者でした。この映画には、もう一人依存症と戦う人物が登場します。ケリー・ライリー演じる、薬物中毒者ニコールです。
―――普段なら、映画鑑賞はワインやビールを片手に楽しみたい私ですが、アルコール依存症を克服しようとするデンゼル・ワシントンの姿を見ながらだと、ワインも楽しめないのがつらいところです、笑。
「フライト」の見どころ
見どころは、機長の判断でアクロバティックな飛行をするハラハラドキドキのシーンですが、これは自分が飛行機に搭乗しているときには見たくないものです。これを機上で放映した航空会社も存在しないのではないでしょうか。
また、後半、彼が調査委員会の質疑に答えるシーンも見どころの一つ。アルコール摂取についてウソを突き通すことを心に決めて調査会に望むのだけれど…?
結末は映画をご覧ください。
無駄のない脚本
ロバート・ゼメキス監督も絶賛というだけあって、ジョン・ゲイティンズによる脚本も素晴らしい。
例えば、ウィップ機長がニコールと出会うシーン。
事故の後入院していた病院の踊り場でこっそりタバコを吸おうとした二人がはちあわせる。そこに、地下病室からひとりのガン患者がやってきます。
このガン患者はこのシーンのみに登場するが、彼の登場のおかげでウィップとニコールの関係が始まるのもそれほど不自然に思えないから不思議。
また、薬物依存症を克服しようとするニコールが彼を連れていった「依存者の会」で、二人が依存者のスピーチを聞くシーンは、ラストシーンへの伏線となっています。
悪友ハーリン(ジョン・グッドマン演)の登場シーンも印象的で、映画に少しコミカルな要素をプラスしてくれます。
見どころ満載のこの作品、私のようにヒューマンドラマ系はちょっと苦手、という人でも楽しめると思います!