はな劇場

地下1階。土壁に囲まれた、アップライトピアノとステージだけの場末パブ。Googleマップには載っていません。

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ベラルーシ、ミンスクの旧ソ連風ホテルにて

丑三つ時に目が覚めた。いや、もっと前から起きていたのかもしれない。寝室の片隅で誰かがいる気配がして目を開けた。

 

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すると、ベッドの足元にフードをかぶった男が立っている。暗い部屋で顔はよく見えないが、向こうもこっちに気が付いた。思わず声を上げそうになったそのとき、男は砂が散り散りになるようにすぅっと消えて、いなくなってしまった。

 

私の悲鳴で夫は飛び起きた。悪夢を見たと思ったのだろう、ぎゅっと抱きしめて「大丈夫だよ」と寝言のようにつぶやいた。

私はいったん閉じてしまった目を開くのが怖くて、でもそのまま眠ることは不可能だった。

 

ほとんど睡眠できないまま迎えた朝、彼に昨夜のことを話した。

「昨日の夜中、誰かが部屋にいた」

「えっ、本当に?! 財布の中身、確認しなくちゃ」

「そうじゃない、人間じゃなかったの」

「なんだい、君は、幽霊でも見たっていうのかい?」

「・・・」

 

夢だったんじゃない、というニュアンスが分かった。

私も夢だったのかもしれないと思う。でも、どっちでもいいとも思った。どうせ、いつか創作のネタにするんだから…。